家族信託のイメージを持ってもらえるよう、ざっくりとした事例を作ってみました。
実際に家族信託を行う場合は、細部まできちんと検討しなければなりません。
1 一人暮らしの高齢者A
希望
判断能力はまだ大丈夫だが、体力が落ちてきており、様々なことが億劫になってきたため、自分の財産を信頼できる子に管理してもらい、自分は今までどおりの環境で悠々自適に生活したい。
施設に入らなければならなくなったときは、自宅等を売ってそのお金で施設に入りたい。
状況
- Aの配偶者は既に亡くなっており、A自身も相当に弱っているため今後が心配
- 子がBとCの2人おり、下の子Cが近くに住んでいるので、Cに財産管理を任せたいとおもっている
- 主な資産は、自宅、賃貸アパート1棟、預貯金、上場株式
- 自宅は数年後にはリフォームが必要
- アパートの賃借人は出入りが激しく、アパート自体も修繕が必要
- 上場株式は売り買いするつもりはない
- 介護が必要になったら、自宅又はアパートを売って、高級な介護施設に入りたい
家族信託の骨格
- Aを委託者、Cを受託者、Aを受益者とする信託契約
- 委託者であるAは、自宅、賃貸アパート、預貯金の一部を信託財産とし、受託者であるCに信託し、自宅、賃貸アパートの維持管理(アパートの賃貸借契約の締結も含む)、必要なときはそれらを処分する権限も与える
- 自宅に居住する利益は受託者であるAに残し、賃貸アパートから得る賃料もAのために使用する
- Aが、介護が必要な状態になったときは、Cが適切な介護施設を探し、入居費用等は自宅又はアパートを処分して賄う
2 障害のある子がいる親D
希望
障害のある子E(50代)がいる。
財産はある程度有るので、自分が死んだ後も、Eが浪費せず普通の生活をしている限りは、暮らしていけるはずである。しかし、Eが一気に多額の財産を手にしてしまうと、誰かに騙されたり、浪費したりするのではないかと心配である。できればE本人には財産管理をさせず、月々一定の額を渡すようにしたい。
状況
- Dの配偶者は既に亡くなっており、D自身も高齢である
- Dは既に退職している
- E以外の子はいないが、信頼できる甥F(30代)がおり、Eのことを気にかけてくれている
- EもFを慕っている
- 主な資産は、自宅、預貯金、上場株式
- Eが元気な間は、自宅で暮らさせて欲しい
- Eが施設に入らなければならない状態になったら、自宅を売ってその費用に充てても良い
家族信託の骨格
- Dを委託者、Fを受託者、Dを受益者、Eを第二次受益者とする信託契約
- 委託者であるDは、自宅、預貯金、上場株式を信託財産とし、受託者であるFに信託し、自宅の維持管理、必要なときはそれらを処分する権限も与える、上場株式も必要な時は処分する権限を与える
- 自宅に居住する利益は受託者であるDに残し(EはDの同居者として自宅に住む)、毎月一定額を預貯金から受け取る
- Dが亡くなった後は、Eが受益者となり自宅に居住する利益を得、毎月一定額を預貯金から受け取る
- Eが施設に入所しなければならない状態になったときは、Fが適切な施設を探し、入居費用等は自宅を処分して賄う