相続時精算課税が利用しやすくなりました

東京都調布市で開業しております税理士の松田と申します。
今回は第2回コラムの暦年贈与の生前贈与加算の対象期間の延長(生前贈与加算の対象期間が延長されます https://igarashi-lawoffice.com/seizenzouyo/)に続き、相続時精算課税の改正点についてご紹介させていただきます。

相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)とは?

相続時精算課税とはそもそも高齢者が保有する資産を次世代に円滑に移転することを背景として創設されました。
生前に贈与を受けても、受贈者(子や孫)が2,500万円までは贈与税を納めずに贈与を受けることができ、その後、贈与者が亡くなった時に、相続財産として相続税で課税される制度で、住宅の購入の際など早期に多額の贈与を受けたい方などには効果的な制度となります。
また暦年贈与のように1年間という期間制限がなく、贈与財産の合計額が累計で2,500万円までは贈与税を課税されず、2,500万円を超えた場合には超えた部分の金額に対して20パーセントの贈与税が課税されます。

相続時精算課税の課税の仕組みについて

相続時精算課税により取得した財産は、将来、贈与者の相続が開始した時に、相続時の財産の取得の有無にかかわらず、過去において相続時精算課税により贈与を受けた財産の全て(後述の基礎控除額を除きます)を相続財産に加え、相続税として課税されます。
算定された相続税額からは、過去に課された贈与税(課税された場合)を控除するため、相続税と贈与税が二重課税とならない仕組みとなっています。
改正前に相続時精算課税贈与により取得した財産はそのまま相続財産に加算されますので、生前贈与での節税効果はほぼ期待できなかったのですが、今回の改正(基礎控除の創設)により一定の効果が期待できることとなりました。

相続時精算課税の適用対象者

暦年課税の贈与であれば、個人間で親族以外でもどのような組み合わせでも贈与を行うことができますが、相続時精算課税は 贈与者からその子や孫への贈与に限られ、贈与をした年の1月1日現在で、贈与者は60歳以上、受贈者は18歳以上などの要件があります。

相続時精算課税の手続き

相続時精算課税制度の適用を受ける場合には、「相続時精算課税選択届出書」及び一定の書類を、選択しようとする贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間(贈与税の申告書の提出期間)に税務署に提出する必要があります。
なお、期限までに相続時精算課税選択届出書の提出がないと暦年課税の贈与として贈与税を計算することとなりますのでご注意ください。
また1度届出書を提出すると、相続時精算課税の適用を受けた贈与者からの贈与については、その後、撤回することはできません。

相続時精算課税の組み合わせ

相続時精算課税は贈与者と受贈者の組み合わせごとに選択できます。
また、父親からの多額の贈与は相続時精算課税を選択し、母親からの少額の贈与は暦年課税というような組み合わせも可能です。

相続時精算課税の改正のポイント

相続時精算課税は今回の改正により一定の節税効果が期待できることとなりました。

基礎控除の創設

改正前は相続時精算課税では暦年贈与課税のような110万円の基礎控除がありませんでしたが、改正により相続時精算課税制度の非課税枠が従来の特別控除額2,500万円から「2,500万円(特別控除額)+年間110万円(基礎控除)」に拡大されました。
また、改正により相続時に加算される贈与額についても基礎控除額の110万円を控除することができるようになりました。
具体的には、改正前は、毎年110万円ずつ10年間贈与を受け、その贈与者が亡くなった場合には110万円✕10年分の1,100万円が相続財産に加算されましたが、改正後は毎年110万円の基礎控除が認められますので、贈与を受けた110万円から110万円を控除すると0円となり、10年分も0円となるため相続財産への加算はありません。

基礎控除額以下の贈与税の申告が不要

改正前は贈与税の納税の有無に関わらず、相続時精算課税制度を利用して贈与を受けた場合には贈与税の申告が必要でしたが、改正後の場合には基礎控除額110万以下の贈与ですと贈与税の申告が不要となります。
また、相続時精算課税を初めて選択した年の贈与が110万円以下の場合には「相続時精算課税選択届出書」のみの提出となります。

暦年課税と相続時精算課税の併用

相続時精算課税と暦年課税は別枠であるため、例えば父親からは相続時精算課税、母親からは暦年課税贈与の場合、それぞれの贈与につき110万円ずつ、年間で合計220万円の基礎控除を1人の受贈者につき行うことができます。

以上のとおり、今回の改正により相続時精算課税制度の利便性と有効性が高まり、今後の利用者の増加も期待されます。
暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利かにつきましては、贈与者の年齢や資産状況、受贈者が子なのか孫なのかなどにより、その対策も異なってきますので、選択の際にはさまざまな観点から計画的に取り組むことが大切です。 ご相談をご希望の方は、是非「松田会計事務所」へお気軽にご連絡下さい。

松田会計事務所
税理士 松田法道
東京都調布市小島町2-37-5
https://matsudakaikei.jp/
2024年2月5日執筆
〈注〉
執筆日現在の法令等をもとに執筆しており、その後の法令等の変更には対応しておりません。

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