借地権の価格について

借地権とは、土地を借りて建物を所有する権利を指します。その権利について価格が発生します。借地権価格については、現行の地代と新たに土地を借りる場合の賃料との差額にもとづいて求める方法があります。すなはち、現行地代は、新規で新たに土地を借る場合の賃料より安い場合が多く、この賃料差額を借地権者の借得といいます。この借得が長期にわたって継続することを前提に借地権価格を求めます。

別の方法として、国税庁ホームページに掲載されている路線価図の借地権割合を参考にして求める方法があります。国税庁ホームページに掲載されている路線価図の借地権割合に更地価格を掛けた価格が借地権価格と主張される方がいます。路線価図の中の借地権割合は、税金を取る目的のための割合であり、借地権割合が非常に高くなっています。路線価図の中の借地権割合に更地価格を掛けた価格よりも、はるかに安い価格で借地権が取引される場合が実際には多いです。理由は、借地権の購入者は借地権購入後に、条件変更承諾料として更地価格の5%~10%、増改築承諾料として更地価格の2%~3%、更新料として更地価格の5%程度、地代増額として更地価格の9%の負担が生じる可能性があるため、更地価格の21%~27%の負担が追加で生じます。相続税路線価の借地権割合が90%とすると90%マイナス(21%~27%)とならないと、借地権の売買は成立しないです。なぜなら、更地の90%で借地権を購入した借地権者はその後、更地価格の21%~27%の追加の負担が生ずる可能性があります。すなはち、借地権を購入する借地権者の負担は、90%プラス21%~27%の負担となり、更地価格よりも、借地権の方が高くなります。したがって、借地権の実際の売買価格は、相続税路線価の借地権割合にもとづく価格よりも低くなります。

最近、相続により借地権を相続した相続人が借地権を地主へ返還するケースも多くなり、相続税路線価の借地権割合の半分の割合に更地価格を掛けた金額で地主に買ってもらう場合もあります。

親族間での借地権を相続した場合には、相続人によっては、無償返還する方もおられます。理由は、親族間でもめたくないとの理由です。最近、相続発生に係る借地権に関して返還するケースが多くなってきているとのことを相続関連の不動産を扱う会社から聞きます。

一般の方が、現行の地代と新たに土地を借りる場合の賃料との差額(借地権者の借得部分)にもとづいて価格を求めることが困難であるため、借地権割合で借地権価格を求める方がおられます。借地権の無償返還以外の場合、上記で述べた借地権割合を参考にして(例えば路線価の借地権割合マイナス20%)、借地権割合に更地価格を掛けて借地権価格を求めますが、土地の時価について争いが起こる場合があります。

不動産の時価には、①地価公示価格(基準地価格)、②相続税路線価格、③実勢価格の3つあります。公示価格は時価であるとして国が公表しています。相続税路線価格の1.25倍が時価とも言われています。ところが、人気の高い住宅地域、商業地においては地価公示価格(基準地価格)や相続税路線価格を1.25倍した価格の2倍近くで取引されることも多く、この価格が実勢価格となります。人気の高い住宅地域、商業地の土地の場合には、土地の適正な時価評価をされることをお勧めします。また、現行の地代と新たに土地を借りる場合の賃料との差額(借地権者の借得部分)にもとづいて借地権価格を求めるには、専門家の評価が必要です。借地権割合に更地価格を掛けて借地権価格を求める場合にも、人気の高い住宅地域、商業地の土地の場合には、実勢価格を求めるのは一般の方では困難であるため、専門家の評価をお勧めします。借地権価格については、当該法律事務所へお問い合わせ頂ければと思います。

不動産鑑定 プリンストン株式会社
専任不動産鑑定士 代表 一川 勝佳使
神奈川県横浜市青葉区みすずが丘1-21
https://www.princetoncorporation.jp/
2024年4月21日執筆
〈注〉
執筆日現在の法令等をもとに執筆しており、その後の法令等の変更には対応しておりません。

お気軽にお問い合わせください

phone_in_talk03-5312-1025

受付時間:月〜金 9:30〜17:30(定休日:土日祝)

expand_less